郵便局が実施している見守りサービスとは一体何なのでしょうか。高齢化社会の中で見守りサービスは年々需要を伸ばしています。見守りサービスとは一体何なのか、そして郵便局が実施している見守りサービスの発足からの経緯を見てみましょう。
【郵便局もあり】見守りサービスとは何か?
郵便局の見守りサービスについて取り上げる前に、そもそも見守りサービスとは何なのか解説しましょう。少子化が年々加速する中で日本は今、高齢化社会となってきています。その中で高齢の両親と離れて暮らしている人は多数います。もし親が急に倒れたらと考えると常に心配が募るでしょう。
まめに連絡を取り合っていても、離れて暮らしている以上、急な場合の対応は困難となるかもしれません。このような急な事態に備えて業者が高齢者の安否確認や非常対応を行うサービスを見守りサービスと呼んでいます。
【郵便局もあり】見守りサービスが求められている背景
高齢者の安否確認を行う見守りサービスは、年々需要増加の一途をたどっています。高齢者の見守りサービスが必要となってきている背景には、現在の日本社会は抱える問題が含まれています。なぜ今、高齢者の見守りサービスが必要となってきているのか、その理由を見てみましょう。
見守りサービスのニーズ①社会の高齢化
日本では近年、未婚者や晩婚者の増加に伴い、少子化による社会の高齢化が起こっています。それと同時に、高齢者が家族と同居する三世代同居世帯の割合も減ってきています。三世代同居世帯の減少の背景には、両親と同居しない核家族の増加および未婚の単身生活者の増加が理由として挙げられます。
その中でも特に問題視されるのは、高齢者が単身となって独り暮らしをしているケース。高齢者の中で単身生活者が占める割合は1980年の時点では約15%でした。この数値は2017年の時点で35.1%まで増加。2030年の時点で、高齢者の中で単身生活者が占める割合は39.7%になるとの数値予測が出ています。
つまり2030年の時点では、高齢者の5人に2人が独り暮らしをしているという予測になっています。
見守りサービスのニーズ②孤独死問題
このように高齢者の独り暮らしが増えるにしたがって問題視されてきているのが高齢者の孤独死問題です。2011年に調べられたある統計によると、この年度の全国の孤独死者数は26,821人であったとされています。ここでの人数は、自宅で発見された高齢の死亡者で、死後2日以上が経っている者とされています。
また別のデータとして、東京都監察の医務院で調べた統計があります。ここ調べられているのは、自宅で死亡した65歳以上の単身者の数。このデータには自殺や事故死を含まるので、純粋な孤独死者数のデータではありませんが、目安となるでしょう。2003年、2010年、2017年のデータは以下の通り。
男性の死亡者 | 女性の死亡者 | 合計 | |
2003年 | 799人 | 642人 | 1,441人 |
2010年 | 1,645人 | 1,263人 | 2,908人 |
2017年 | 2,147人 | 1,172人 | 3,589人 |
2017年のデータを、その14年前である2003年のデータと比較した場合、男性の高齢単身死亡者は約2.7倍、女性は約1.8倍、全体では約2.5倍となっています。急増する孤独死の対策として見守りサービスが注目されているのです。
【郵便局も実施】見守りサービスの種類とは?
このように、特に単身で暮らす高齢者の安否確認目的と緊急時の対策として見守りサービスが注目されています。見守りサービスは大きく分けると4種類に分類されます。その4種類とは定期訪問型、緊急通知型、業者確認型、そして家族通知型です。それぞれの特徴を見てみましょう。
見守りサービス①定期訪問型
見守りサービスの種類としてまず取り上げるのは定期訪問型。定期訪問型見守りサービスは担当のサービス員が定期的に高齢者宅を訪れて状況を把握するタイプの見守りサービスです。定期訪問型のメリットとしては実際に会って状況確認ができるので、正確な状況が把握しやすい事。
また孤独になりがちな単身高齢者にサービス員が訪問するので、心のケアになるという点もあるでしょう。反面、デメリットとしては定期訪問時以外の緊急事態には対応していない事が挙げられます。また人によっては他人と接する事自体に煩わしさを感じる人もいるので、サービス提供が難しくなる場合もあります。
見守りサービス②緊急通知型
見守りサービスの種類として次に緊急通知型があります。緊急通知型見守りサービスでは高齢者自身に緊急通知用のブザーを渡します。そして自らが異変を感じた時にブザーで知らせる事によってサービス員が駆けつける方法です。緊急通知型のメリットとしては導入が簡単で費用が安い事が挙げられます。
一方で問題点としては、高齢者が異常を感じた時に自ら通報しなければならないため、適確に通報が行われない可能性が指摘されます。またブザーはバッテリー式が多いので、高齢者がバッテリーの交換を適確にできるのかという問題もあります。
見守りサービス③業者確認型
見守りサービスの種類としては業者確認型もあります。業者確認型見守りサービスでは高齢者の毎日の生活動線にセンサーを設置して毎日の無事を確認。一定時間センサー反応がない場合に異常を感知して業者が確認するサービスです。業者確認型のメリットとしては高齢者の精神的負担になりにくい点が挙げられます。
また毎日まめに確認されているので孤独死は防ぐ事ができる点も挙げられます。デメリットとして挙げられるのは料金が高額になってしまう点。また突発的な緊急事態に関して発見が遅れる可能性も挙げられます。
見守りサービス④家族通知型
見守りサービスの種類として最後に家族通知型が挙げられます。家族通知型見守りサービスでは電力などの使用料を測定するセンサーを設置して、長時間使用がない場合に異変を家族に通知します。家族通知型のメリットとしては高齢者の精神的負担がない事が挙げられます。
電力使用料を常に確認しているのですぐに異変が発見できる事もメリット。反面で、一刻を争う急病の場合に発見が遅れてしまう可能性も。スマホを使って確認するので、高齢者の家族がスマホ操作をできる事が条件となります。
郵便局の見守りサービスとは?発足からの経緯
ここまでは高齢者の見守りサービスについて、そのサービスの需要が伸びている背景や、見守りサービスの種類について取り上げました。ここで、この記事のテーマである郵便局の見守りサービスについて見てみましょう。郵便局が高齢者の見守りサービスを始めたのは2015年の事。
郵便局の高齢者見守りサービスは発足してから数年でさまざまな紆余曲折がありました。郵便局の見守りサービスの発足の経緯から今までの動きについて振り返ってみましょう。
郵便局の見守りサービス①2015年に発足
日本郵政が郵便局による見守りサービスを始めたのは2015年の事。当初は日本郵政がアメリカのアップル社及びIBM社と提携する3社共同の大型事業として注目されました。具体的な計画内容としてはアップル社の看板商品であるiPadで使用できる高齢者見守り用のソフトウェアをIBMが開発。
更にAI技術を導入して高齢者の健康管理を促進するサービスまでを視野に入れた壮大なものでした。日本郵政の2015年時点での見込みとしては、5年後の2020年をめどに全国で400万~500万世帯へ普及させるという具体的な目標も掲げられていました。
郵便局の見守りサービス②2017年に業務縮小
ところがその2年後の2017年、日本郵政は当初予定していた高齢者用のiPadの配布を取りやめ、計画されていた子会社設立も中止にするという大幅な事業縮小を発表しました。日本郵政が当初の予定を縮小せざるを得なくなった理由としては主に2つの事が挙げられます。
1つはiPadを調達するIBMと日本郵政との条件に折り合いが付かず話が暗礁に乗り上げてしまった事。そしてもう1つは高齢者によるiPadの操作に困難があり、それを教育する制度を作るためには予算が足りない事。2015年に掲げた日本郵政の計画は一度失敗を見る結果となってしまいました。
郵便局の見守りサービス~サービスの変更内容は?
日本郵政による郵便局の見守りサービスは2017年、このように大幅に内容変更となりました。内容変更となった結果、当初予定されていた高齢者用iPadの配布は中止され、郵便局員が持つ事に。郵便局の高齢者見守りサービスは3つのサービス内容を掲げる事になりました。
1つ目のサービスはそのiPadを持った担当の郵便局員が1ヶ月に1度高齢者の元を訪問して、健康状況の結果を家族に報告する『みまもり訪問』。続いては郵便局が電話で高齢者の健康状況を確認して家族に報告する『みまもり電話』。そして緊急事態発生時に委託の警備会社が駆けつける『駆けつけサービス』。
大幅に内容変更した上で、郵便局の見守りサービスは再スタートしました。
郵便局の見守りサービス~業務縮小の理由
郵便局の見守りサービスが一度失敗してしまった理由はいくつかあるでしょう。まずはiPadを高齢者に操作させる計画自体に無理があった事。次に高価なiPadを導入したために採算が合わなくなった事。そして認知度が伸びずに加入者が少なかった事です。
しかし、計画としては一度失敗した郵便局の見守りサービスですが、需要がある事には変わりがないと言えるでしょう。老人の独り暮らしが増加する中で社会問題となりつつある高齢者の孤独死問題。普段定期的に地域を訪問している郵便局員がその安否確認を行うという方法は良いアイディアだと言えるでしょう。
郵便局の見守りサービスは離れた親の安否確認に便利
この記事では近年需要が伸びてきている見守りサービスの実態、そして日本郵政が始めた郵便局の見守りサービスを取り上げました。高齢者の孤独死が問題視される中で、現在見守りサービスの在り方が大きく問われています。
一度失敗を見た郵便局の見守りサービスですが現在の社会の中では必要性があるサービスと言えるでしょう。家族に独り暮らしの高齢者がいる家庭は、郵便局の見守りサービスも検討してみましょう。